タイトルとかはないよ、いまんとこ。

>アスペな自分 頭でっかちにならないように、体験ベースで書けよ。

言葉は記憶のトリガーに過ぎない

リモートワークで大事なことは、ローコンテクストな言葉で語ることだ、と書いている人がいた。

使い方のポイントは、ローコンテキストで伝えること。具体的なコミュニケーションが必要。
リモートワークする人に知っておいてほしいこと

言葉は記憶のトリガーにすぎない

リモートワークでローコンテキストなコミュニケーションが大事というのは、正しいことだと思う。さらに思うのは、「言葉は伝わらない(言葉ですら伝わらない)」ということを、自覚して言葉を使うべき、ということ。

以前このテーマで文章を書いたことがある。少し感傷的にすぎるが、引用しておく。

「伝わる」という現象は、話を聞いた人が、感じた振動から、一人で勝手にある事柄を思い浮かべることである。それがたまたま話をした人が思い浮かべたことと似通っていることが「伝わる」ということの正体である。
もらいたばこ─┛~~: 言葉は伝わらない

言葉が伝わるというのはあくまで比喩である。実際に起こっているのは、相手の経験を引っ張り出すためのトリガーを提示しあい、引っ張り出された経験の共通項を探り、結構似ているね、ということをとりあえず納得しあうことだ。完全一致はあり得ない

言葉を聞いた人には、勝手気ままに想像する余地が残されている。だから、もしあなたの言ったことと、ほんの少しでも近い事柄を頭の中に思い浮 かべてくれる人が居たとしたら、それは、そのことだけで、奇跡的なことである。同時に2人の人が、全く同じ夢を見ているのが分かったときと同じぐらいの幸福感を味わってもおかしくはない。
もらいたばこ─┛~~: 言葉は伝わらない

ね、感傷的だって言ったでしょ。だけど、この考え方は今も変わらない。冒頭紹介した「ローコンテクストに語る」というのは、なじんだ言い方に変えれば、「普通言わなくても分かるだろ」はいったん無いものとして、「わかってもらえるように言葉を尽くす」ということだ。既存の文脈に頼らず、自ら文脈を作ることで、それまでの流れを知らない人、共通事項が少ない人にも、なんとかその人の持っている経験の中から近いものを引っ張り出してきてもらうことだ。

そのための手法は、いろんな人がいろんなことを言っていて、きっとどれもそれぞれに正しい。

※「普通」とか「常識」とかは、アスペルガーにとっては鬼門。こちらからすれば、なんの根拠にもなっていない言葉。ただし、たいてい結果的には正しいので、前例に則ることは効率化のためには必要なことではある。ことわざが実用的なのと同じだ。判断基準に使うには構わないが、「普通」や「常識」は「勘」や「経験」とかわらないものを判断基準としたことをまず自覚し、相手の考えとはズレることがあるということを踏まえておく必要があるだろう。
※この言葉が私に向けられるときは、何かミスっていたりズレていることを指摘されるときだから、どうしてもネガティヴなイメージを持ってしまう。ま、あくまでイメージなのだと認識しておかないとね。

日本語はまさにオブジェクト指向である。テーブルの上の塩をとって欲しい場合、たいていの日本人は、「すいません、塩を...」まで言ったところで一呼吸置く。「塩」というオブジェクトを指定した時点で、「とって欲しい」ことは自明であり、ここまで言えば、99.9%の日本人は塩をとってくれる。「え、この塩で何をしろって言うんですか?」と聞き返す人はよほどの変人である。
Life is beautiful: 日本語とオブジェクト指向

人と自分はまったく違う人生を生きていて、すべてをわかってもらうことなんてできないと思っています。相手のことも「わかる」なんて言えない。でも、わからないからこそ話すし、わからないままで語り合うことが、本当の関わりだと思います。
 詩の言葉は、そうした「わからなさ」を、そのままにしていく、そうした部分に息をさせる言葉なんだと思います。気持ちを言葉にすることは、それだけで自分の気持ちを既成の枠に押し込める行為のようにも思います。でも、言葉は、そうした苦しいだけの存在ではないと思う。わかり合えないまま語り合うときに用いられるのも言葉です。
詩人・最果タヒが広げる言葉との出会い。SNS時代に「わからなさ」に息をさせる|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

伝わらないからこそ、具体的な指示をしよう

自分にとって効果的なトリガーは、相手にとっても効果的だと信じ込んでいるのがアスペルガー傾向のある人のコミュニケーションの特徴だと思う。これを克服するために、相手の気持ちを想像できるようになる、というのは、正直言って難しい、というか、コスパが悪すぎる。

かといって、ローコンテキストに語れといわれても、どこから提示してどこまで詳しく語ればいいかわからず、結局事細かに話し出して、肝がどこなのか、聞いている相手にも、話している自分にも、分からなくなるのが落ちだ。

だから、コスパを求めるのなら、伝わらないこと前提で、まずは、一番言いたいこと/相手にやって欲しいことを、場に放り込もう。背景を理解されなくても、何をやればいいのか分かってもらうことから始めよう。いわゆる「端的で具体的な指示」という奴だ。ものの名前や人の名前などを可能な限りぼかさない、というのが一つの基準かもしれない。主語動詞名詞、判断なら形容詞、依頼なら期日などを、略さず、ぼかさず、明示する。たとえば、「近いうちに」と言いそうになったら、せめて「2、3日中に」と言ってみよう。

そして、指示が正しく伝わらず、期待した行動をとってくれなかったときに、相手を責めることをやめよう。そもそも伝わらないものに過度に期待しても意味がない。期待したとのとずれがあったら現実的な選択肢は

  • 何が違うかを伝えてやり直してもらうか
  • 大筋あっているから良しとするか
  • 自分で手直しするか

こんなところだろう。許される時間と、自分のコミュニケーション能力を考慮して、どれかを選択していくことになるだろう。

誤解を恐れずに言えば、コミュニケーションとは、誤解を訂正しあい続けることだ。

※具体的、はともかく、端的って、難しいよね。

  1. メモ書き(「試みる日本語」)
  2. メモを自分のためにまとめた文章(「表す日本語」)
  3. 三者に伝えるための文章(「伝える日本語」)
  4. 外国語に直訳できる日本語(訳せる日本語)
  5. 「訳せる日本語」を直訳した翻訳原稿(「表す外国語」)
  6. 三者に伝えるための外国語文章(「伝える外国語」)

※ネット上で出典うまく見つけられず。PDF直リンクなら落ちているようだが…
https://www.tech-jpn.jp/

https://japio.or.jp/


ひとつは「一から十まで丁寧に説明する」ということ。特にツイッターでは、含みを持った書き方、抽象的な書き方では伝わらないことが多いんですよね。
「140字で共感を呼ぶ」No.1インフルエンサーがバズる文章の鉄則を教えます 誰が読んでもこれなら伝わる! | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

人にしゃべらせる方法を考えたときに、先入観は持っていたほうがいい。もっと言えば、先入観はむしろ間違ってるほうがいいかもしれないくらい。なぜか? 人は間違った情報を訂正するときにいちばんしゃべる生き物だからです。

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「え? そんなことも通じてなかったの?」とあきれる前に「そういう人がいてもおかしくない」と考え直すほうが建設的だ。相手の話をしっかり受け止め、観察するなかから、相手の理解度を見定める。
【153】実感!易しさは優しさのもと 日経BP

伝わるコミュニケーションは「マナー」
 書き込みの内容ひとつとっても、受け取る相手のことを思いやり、その人に伝わる形で文字にしてあげることは、多種多様なツールを日頃から使っている現代人にとって必要なマナーではないかと思うのです。
リモートワークで大切なのは「衝突」だった――100人100通りの働き方を実現するために | 文春オンライン

忘れがちなノンバーバルコミュニケーションの重要性

コミュニケーションで言葉が果たす役割は最後の詰めの部分だけで、コミュニケーションで大事な要素の大部分は、身振り手振り声色その他言葉以外の要素だ。動物の鳴き声みたいなもので、これが、おそらく「空気」の正体だと思う。

リモートワークだと、空気を読めなくなる。そのため、チャットで何でもともかくすぐ共有しまくれ、なんて意見もある。これも、コンテクストを意識的に作るためのひとつの手段。ただ、やはり、対面でのノンバーバルコミュニケーションがとれないという障壁を完全に取っ払うことは難しいでしょう。

成果をあげるための対話と、雑談による信頼関係の構築とは切り分けて考えるようなことが、必要になってくるのかなと思う。

また、別の議論として、テキストに頼るにしても、チャットがいいのか、メールがいいのか、別途資料にまとめるのかは考えるべき。とりあえず一番伝えたいポイントだけ端的にチャットで放り込んで、細かい説明は別途資料にするとか。メールもチャットもTwitter同様流れて忘れられてしまうので。

ちなみに、私は、雑談で自分の気持ちを声色に乗せるのがとても苦手でよく誤解されて凹んでます。(20/6/5)

コミュニケーションを楽しめるようになるには?

実用的な、ビジネス的なコミュニケーションとは別に、言葉を交わすことでお互いが気持ちよくなることを目的としたコミュニケーションが存在する。アスペルガーが障害となりうるのはこちらを求めたときだ。そして、渇望しているのも実はこちらだ。

どんだけ言葉を尽くしても、気持ちよくなれないのは、結局、アスペルガーはノンバーバルコミュニケーションが薄すぎて何も伝えられないし受け取れないからだろう。

どもりや口ごもりが原因で「聞こえない」と何度妻に言われたことか。そのために内容を見ればただの冗談だったりするのに、イライラや悲しみが募っていく。これは…どうしたもんかなあ。へこんできた。

これはもう、ある意味どうしようもない。できるだけ同じ文脈にいるもの同士身を寄せ合うしかない。そうやってできあがったのが、当事者同士の茶話会だろう。

もうひとつ、私が活路を見いだしたいのは、結婚によって文脈をたくさん共有して、なるべくなるべく伝わったという喜び増やすことだ。家庭の中でもローコンテキストな言葉を使いながら、自分の中にどんなコンテキストが存在しているのかを明白に伝えながら、文脈を揃えていくことを、諦めずに続けること。

それと、さらにもうひとつ。関係性を保つためには、自己顕示欲はじゃまになると言うこと。これについては、以下で。たぶん、自己顕示欲を無視することのほうが、文脈から切り離しても分かるように話したり書いたりすることよりも、もっと実践は難しい。

アスペルガー的課題意識:ローコンテキストからハイコンテキストへの移行

ここまでいろいろなことを書いてきたが、「そうはいっても…」という話だ。一人で頑張ってローコンテキスト推進派になったところで、周囲はそう簡単には変わらない。

コンテキストがいかに共有されるのかを学び、ローコンテキストからハイコンテキストへの移行(社会化/世間に一人前と認められる)こと、ハイコンテキストな人間関係の中で、コンテキストを共有していない人間が、いかに気持ちよく暮らしていくことができるか、が常に課題となる。

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