岩本友規氏と発達障害と付き合いながらうまく働く方法について考える:発達障害の自分の育て方(2章 あなたはこれからどう生きる?大人の発達障害の現実と未来)
自分の発達障害特性を知って間もない頃に読んだ中の1冊。発達障害を抱えながら、いかに仕事と子育てをするかのヒントとしてたびたび読み返している本です。
この本を見出しで振り返りながら、考えを整理したいと思います。
新卒入社クローズド就労勤続10年目年収額面500万妻子有り中古分譲マンション購入した私なりの発達障害中心の自分史かもしれません。
※追記を重ねて記事が長くなってきたので、章ごとに記事を分けることにしました(20/4/5)
※『7つの習慣』が元ネタになっていそうな気がしてきた。ただ、車輪の再発明は必ずしも悪ではなく、各現場での切実さの現れだと思う。その場合は車輪の再発見とでも呼ぶべきか。
7つの習慣とは、「依存」から「自立」、「相互依存」へと至る、成長の連続体を導くプロセスでもある。そのプロセスは、「私的成功の習慣(第1~第3の習慣)」、「公的成功の習慣(第4~第6の習慣)」、「再新再生の習慣(第7の習慣)」と大きく3段階に分類することができる。
1章 大人の発達障害克服体験記
2章 あなたはこれからどう生きる?大人の発達障害の現実と未来
社会的認知は進んでも、職場のサポートは得られにくい
職場では発達障害について知らせていません。いわゆるクローズド就労です。
一時期業務量が増えて月80時間残業が続いたときに、見通し立てたり、ざっくり所要時間を直感で出したりする事が苦手で、きちんと調べたり細かい作業レベルで自分マニュアル作ってそれを見ながら作業しないと抜け漏れが不安でスピードが上がらない、など、特性にまつわる苦手なことは伝えたことがあります。そのときは、先輩に優先順位付けをしてもらって、いろんな人への割り振りを手伝ってもらって、なんとかさばいてもらいました。
ただ、ミスがでたときの対策の説明などで、「他人事だと思っているのでは」「当事者意識が足りない」と言われたのはきつかった。私としてはできる限り客観的に、どういう状態ならミスを防げたのか、自分は何をすべきか、周りには何をしてほしいか、を分析したつもりでしたが、おそらくは、謝罪がへたくそだったのでしょうね。事実重視なのはアスペルガーの強みの一つともされる特性ですが、一般的にはなかなか理解はされにくいです。
※似たようなことは妻にもよく言われます。好きで尊敬している相手からなら、キツくても受けとめようと踏ん張れますけどね。上司同僚にそんな思い入れはないので。アスペルガーは気持ちが分からず事実ベースなんて話もあるけれど、それは、語弊があると思う。相手は選ぶよ。
まあ、発達障害だからって、仕事でのミスが許されるわけではないですからね。この話をOMgrayのイベントで話したときには、「尊厳は守られるべき」とフォローされました。
※尊厳って何だ、という話はまた別途まとめたい。今のところはある福祉関係サイトにあった「みじめな思いを強要されない」というのが答えに近いのかな、と思っている。ちなみに、Oxford Advanced learner's Dictionaryで「dignity」は「自分自身の重要性と価値を感じること」と説明されていました。
責任を求められるということは、自分の立場の重要性を感じられることではある。ミスを指摘されたときの悔しい気持ちとかは、尊厳を傷つけないし、それで自信を失ったとしても、尊厳を傷つけられたことにはならないのかな。感情は人に強要されることは無いわけだし。あー、「恥を知れ!」って言葉は、文字通りの意味なら感情を強要してるよね。(20/9/23)
誰も、みじめな思いを強要されない社会
他者からの言動や行為によって、くやしくて、なさけなくて、はずかしくて泣いている人がいる状態は、尊厳が守られていないということです。注意したいのは、それが自分自身の責任においてそうなっている場合は、尊厳の問題ではないということです。こうしたみじめな思いが、他者から強要されるとき、尊厳の問題になります。
日本国憲法にある通り(14条)、差別は「政治的、経済的又は社会的関係において」発生する。したがって、その関係のあり方を分析し、変えていくことでしか差別問題は解消していかない。
つまり、人権教育がめざしているのは、構造的に問題を把握することであり、それに基づく社会変革なのである。これは、道徳がいわば「心のありよう」といった個人の内面に焦点を当て、その枠組みにおいて問題を把握しようとしていることとは大きく異なる。
実は、「人権」は万国共通の理念と思われがちだが、日本には欧米と異なる人権理念がある。明治の評論家山路愛山は、欧米とは異なる日本の人権があることを早くから指摘していた。経済学者の河上肇は日本の人権を天賦人権ではなく「国賦人権」だと言った。二人の言っていることは要するに、人権が国によって「恩寵」として与えられている、ということだ。
パーソナリティの概念規定は様々ありはするが、人間関係の問題にかかわる場面に限定するなら、実際的に活用できる概念規定としては「パーソナリティとは、人間に特徴的な行動と考えとを決定する精神身体的体系の力動的組織」とするゴードン・オルポートの定義であろう[3][4]。そしてさらに「性格、気質、興味、態度、価値観などを含む、個人の統合体である」としておくとよい[5]。
発達障害は、上記の人格の構成要素の一つになりうる。発達障害による思考の癖やズレを強制すべきものと捉えること自体が、人格否定につながる可能性を否めない。存在を認めた上でどう対応するかを考えてほしい…。これがニューロダイバーシティを認める考え方につながっていくのかな。んー、コミュニケーションの障害とか、正直やっぱ障壁でしかないんだよな。考え方のズレなんて、定型同士でもあるものだろうけど、程度が大きくて、かつ、そこに、脳機能の障害が認められるとしたら、「あいつは障害者だから分かり合えない」というレッテルを貼ることができるようになる。ツーカーの気持ちよさを正常としてしまえば、めんどくさくてしょうがないはず。(20/9/23)
「発達障害の適職」は気休め
運良く私はテクニカルライターという、対人の仕事が少ない職種につくことが出来ました。取説専門に執筆/編集をする仕事で、仕様書からユーザー向けの説明書に情報を整理するのは、アスペルガーには向いた仕事だと感じています。
著者同様、データを扱うことが中心なので失敗してもやり直しがやすいのは助かります。壊したり、なくしたり、失敗して人に危害を与えたりする機会が少ないというのも、大事なポイントだと思います。発達障害を抱えていると、思いつく限りのありとあらゆる凡ミスを毎日すべておこしてもおかしくないので。
また、客先となるメーカーに出向になることもありますが、どのメーカーでも取説部門は末端であり、その末端の請負会社となれば立場は弱く、無理難題を言われたり、皮肉を言われたりしているようなのですが…私は前者に対して無理なものは無理、後者については皮肉であることに気づかないらしく、一緒に自社から出向した同僚や上司に、メンタルが強いと誤解されることがあります。良いやら悪いやらですが、出向してディレクションをやるのは、上流行程に上がったということではあるので、評価を上げるチャンスでもあります。
ただ、作業者から一つ上流の進行管理役(いわゆるディレクターやプロジェクトマネージャー的な役割)になると、自分で作業をするのではなく、人にやってもらう立場になるため、難しさが出てきます。今は必死に食らいついています。アスペルガーが陥りがちな、「やりすぎ」については、「自分では作業をやらない」のが上流の仕事なので、軽減できているかも知れません。ただ、それでもディレクターにしてはやりすぎ、になる可能性はあり、そうなると現場への指示が遅れることになるので要注意です。
「記者」だとか「学者」なんて仕事はそうそう転がっているものじゃありません。
症状対策ノウハウの限界
上述のとおり、一度パンクしました。業務量調整、その後会社命令で別チームに異動、メーカー出向でディレクション業務に変わり、今度は取り回し下手、段取り下手、交渉下手に向き合い続ける日々です。
冬のボーナスに向けて上司からのフィードバックがあった。「人に合わせる力」と「先読み」が甘い、との評価。よく見てくださっているなあと感じた。…それ、手に入れられたらいいよなあ。たしかになあ。一番難しいよなあ。#ASD
— jinthebassman (@jinthebassman) 2019年12月2日
仕事してて思うのは、お互いの論が平行線の場合、どこに着地点を見いだすかがとても大事。ASD同士のつきあいでも、大きなポイントになりそうな気がする。白黒付けたがるし。ぶつけ合いで感情的にならず、どちらかの意見で納得するなり、弁証法的に新しい道を造るなり。 https://t.co/rcc7lUlWw4
— jinthebassman (@jinthebassman) 2019年12月8日
そこでまた私たちは工夫をするかもしれません。ですが周囲が普通にできることを根本的に違うアプローチで処理したり考えたりすることが多い私たちは対応できる絶対量にかぎりがあります。次第に業務の量や質についていけなくなり、「もう無理です」の一言が言えないまま、自分の対応能力を超えてしまい体調を崩してしまう……。
苦しい二者択一、お金か心の平穏か
自分の望む未来は自分で切りひらく時代へ
3章 大人の発達障害克服マニュアル
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