エラーに備えてデザインする(D.A.ノーマン『誰のためのデザイン?』再読)
仕事で、過去のミスの対策が検討されないまま積み重なって繰り返されているため、経緯~原因~対策、といわゆる「なぜなぜ分析」の手法で対策を検討中。
そんな中、部屋の片づけ中に『誰のためのデザイン?』が出てきたので、久々に眺めていたら、ミス対策中にネットで出会った「スリップ」と「ミステイク」の話がこの本に書かれていたので、読み返した。メモがてらまとめておく。
(ネットで見つけた情報では、ノーマンの分析として「スリップ」「ミステイク」のほかに「ラプス」も取り上げられていたが、この本には「ラプス」は出てこないのね)
『誰のためのデザイン?』もくじ
(読んだのは主に太字箇所)
第1章 毎日使う道具の精神病理学
第2章 日常場面における行為の心理学
第3章 頭の中の知識と外界にある知識
第4章 何をするかを知る
第5章 誤るは人の常
第6章 デザインという困難な課題
第7章 ユーザー中心のデザイン
人はどのように作業をするかーー行為の七段階理論
考えるべきこと | PDC | 行為の段階 | 起こり得るエラー |
ゴール | Plan |
①ゴールの形成 ②意図の形成 (ゴール達成のために行為を特定) ③行為の詳細化 |
ミステイク (不適切なゴールを選んでしまう) |
外界に何をするか | Do | ④行為の実行 |
スリップ (気が付くと他の事をやっている) |
外界そのもの | - | - | - |
外界のチェック | Check |
⑤外界の状況の知覚 ⑥外界の状況の解釈 ⑦結果の評価 (=ゴールとの比較) |
※ミクロに見れば、すべての段階は、ゴールになり得る
※④実行段階のミスには、やり忘れ(ラプス)もあり得る
191006追記: 私の場合は、④でのスリップと、⑤⑥①での誤解が多そう。④⑤⑥は注意欠陥が、①にはコミュ障が、要因なっていそうだ。
★課題:ゴールの形成、意図の形成で誤らない方法は?
おそらくこの問いは、⑥で正しい解釈をする方法を問うのと同義だろう。そのためには⑤で適切な知覚を行う必要がある。
誰かが困っている。その人の意図と結果は、どうずれているのか。そもそもどういう結果を望んでいたのか。何が原因でずれたのか…。
偏見や思い込みを除いた科学的な態度で、丁寧に外界のチェックを行うしかないのだろうと思っている。そして、その材料集めとして、相手へのヒアリングが含まれる。
191006追記: このあたり、コミュニケーションのコツに気付く目的でなら、パターンランゲージを探してみるのもありかもしれない。
ユーザ中心のデザイン:5つの方法
1. 知識は覚えなくても、見ればわかるようにする
(覚えれば作業は速くなる)
2. 作業を単純化する
① 同じやり方のまま単純化する
- 方法(1) 必要な情報は記憶するのではなくメモする
- 方法(2) 合っているか間違っているかすぐわかるようにする
- 方法(3) 自動化する
② やり方そのものを変える
(例:靴を紐でとめるのではなく、マジックテープにかえる)
3. 今できることと、やったことだけが、見えるようにする
⇒ 出来ることと、意図とを、結び付けやすくなる
⇒ やるべきでないことは、見えにくいので、やりにくくなる
4. エラーに備えてデザインする
① エラーの原因理解し、原因を減らす
② undoできるようにする
③ エラーを見つけやすくする(重複)
④ エラーはゴールへ少しずつ近づく過程だと考える
(=「そっちじゃないよ。あっちが正解だよ。戻ってやり直そう。」)
5. 最後の手段:行為・結果・配置をルール化して、覚えてもらう
(=文化的制約)
企業の内部・外部へのコミュニケーション活動には、「ルール(約束)」「ツール(道具)」「ロール(役割)」の3つの要素が、
きちんと組み合わされて機能していることが重要です。
- ルールとは、経営方針や企業理念、あるいは営業戦略といった伝達すべき概念。
- ロールとは、社長から部長、課長、係長、パート、アルバイトに到るまでのそれぞれの持場で果すべき役割。
- ツールとは、概念を伝達するためのあらゆる道具(メディア)です。
ルールが機能しないというのは、
- 「役割」の認識が不十分なのか、
- ルールの「意味」を伝えきれていないのか、
- 伝えるための「道具」が不十分なのか、
- あるいはルールそのものに不備があるか
のいずれかです。
米国の組織犯罪研究者であるドナルド・R・クレッシーは、不正は「動機・プレッシャー」「機会」「正当化」の3つの要因が揃ったときに発生するという「不正のトライアングル」という考え方を提唱しています。
関連書籍
誰のためのデザイン?増補・改訂版 認知科学者のデザイン原論 [ ドナルド・A.ノーマン ] 価格:3,630円 |